公開日:2021.12.09更新日:2023.02.13
化学薬品ボトリングプラントにおけるクリーンシステム
目次
クリーンシステムとは
クリーンシステムとは、限られた空間内の空気中に浮遊するゴミやホコリや浮遊微生物(コンタミナント)を一定基準以下になるように清浄度を管理したシステムの総称です。サイズや用途等によって「クリーンルーム」「クリーンブース」といった機器や設備に分類されます。高純度薬液を製造している化学薬品メーカーにとって、製品の品質保持や汚染防止の観点から欠かすことのできないシステムです。
通常、仕事場や家庭内では1ft3(約30.5cm四方)の空間に0.5㎛の微粒子が約100万個ありますが、高純度薬液を製造している化学薬品メーカーで使用するクリーンブース内は例えばISOクラス4の場合、1ft3(約30.5cm四方)の空間に0.5㎛の粒子が10個以下しかない状態が維持されています。
それだけクリーンブース内は徹底的に不純物を排除している空間なのです。
クリーンシステムを設置する目的
化学薬品メーカーの場合、目に見えない塵やほこりを製品である薬品に付着させないためです。付着した場合、不純物として製品中に混ざって致命的欠陥となり、不良品となってしまうのです。
クリーンルームとクリーンブースの違い
クリーンルーム
クリーンルームは断熱パネルなどで外空間と完全に遮断している、清浄度の高い部屋となります。特長としては温度調整、空圧設定が可能であり、きれいな空気を循環させフィルターを通すことで再利用させることが可能です。
クリーンブース
一方でクリーンブースはビニールカーテンなどのソフトウォールで外の空間と仕切り、クリーン化機器で清浄度を高めている箇所となります。特長としてクリーンルームと違い壁材や空調を使用していないのでコストダウンを図れます。
クリーンルーム内にクリーンブースを設置することで、さらに清浄な空間を作り上げることも可能です。
清浄度とは
クリーンルーム及びクリーンブース内で微粒子数を基準に定められている、空気の綺麗さの度合いを階級で表しているものになります。主に米国連邦規格とISO規格によって、空気清浄度ごとにクラス分けがされています。
清浄度規格は、米国連邦規格Fed.Std.209シリーズが長く使用され、1ft3(約30.5cm四方)中の0.5μm以上の粒子数でクラス分けされていました。現在は、1m3中の0.1μm以上の粒子数を基準にクラス分けされているISO14644-1が、清浄度評価方法を含めて唯一の国際規格となっています。
JIS(日本工業規格)において、正式には国際規格を採用していますが、業界では以前より広く慣用されている米国連邦規格を使用する場合が多い状況です。
国際規格(ISO14644-1)
米国連邦規格(Fed.std.209E)
業界や企業によって異なる清浄度が定められています。例えば化学薬品製造の中でも高純度薬液を製造している工場の場合はISOクラス3~5の清浄度が必要であり、一般的な薬品や精密機器を取り扱う工場ではISOクラス5~7の清浄度が必要です。
清浄度はクラスが小さければ小さいほど、徹底した微粒子管理が必要となり設備や維持費も高くなります。
クリーンルーム・ブースの形態
クリーンルームやクリーンブースの形態には大まかに分けて2種類あります。
非一方向流式(乱流式)
天井の一部に高性能フィルター(HEPAフィルター、ULPAフィルター)、別の一部に排気口を設置し、清浄空気を室内に供給し、室内で発生したゴミやホコリ、浮遊微生物(コンタミナント)を希釈して排出する構造です。
コンタミナントを気流で押し出して排出することが困難なので、清浄度はクラス6~8と低くなりますが、垂直一方向流式と比較してイニシャルコストとランニングストを抑えることが可能です。
垂直一方向流式
天井全体に高性能フィルター(HEPAフィルター、ULPAフィルター)を設置し、気流が空間全体で垂直方向に流れます。浮遊するゴミやホコリ、浮遊微生物(コンタミナント)は、気流に沿って押し出されるように室外に排出され、空間内に滞留・蓄積しにくい構造です。
換気回数は200回~300回以上/hを要しますが、ISOクラス5以上の高い清浄度を形成できます。化学薬品メーカーなどは工場のスペースの関係で大きいクリーンルームは設置できないケースでもクリーンブースで製造ラインの重要箇所の清浄度を保っています。
まとめ
現在においてクリーンブースはISOクラス3のような高い清浄度にも対応可能になっており、様々な製造現場で使用されています。昔は高い清浄度が必要な場合は一定の広さが必要な上にコストもかかるクリールームを使用しなければなりませんでした。
永田製作所では化学薬品メーカー様に高性能なクリーンブースを備えた製造ラインを提供しています。
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